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「教育機会確保法」声明 |
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掲載日:2016/5/18 |
「教育機会確保法」の今国会での拙速な成立を見送り、不登校当事者はじめ誰もが安心できる施策のための検討を続けることを求めます |
「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案」(いわゆる教育機会確保法案)が国会に上程されました。これは昨年いわゆる多様な教育機会法案として、主にフリースクールなどに通う子どもの学びを認定するものとして発案されましたが、保護者が個別学習計画を作成して教育委員会で認定を受けることなどの問題点のため多くの批判があって取り下げられ、形を変えて不登校児童生徒の学習への対策として提案されたものです。
この法案は、不登校の定義が集団生活への心理的負担という不十分なとらえ方にとどまること、学校生活を起点に記述しているため、学習活動を教科等の学習に狭く読み取られる余地があること、学習と関連づけられた休養の記述になっていることなど、内容上、看過できない問題があります。また支援策の名のもとに、児童生徒本人や保護者の意に反して情報の収集と処遇計画が一方的に進められることを排除できない設計上の問題もあります。これらのことだけでも、拙速な制定を避けて十分な検討を尽くす必要があることは明らかです。
しかし何より現時点で最大の問題は、この法案に対してほかならぬ当事者の中から非常に強い懸念と不安の声が多く上がり、強行をやめてほしいと訴えられていることです。それは、追い詰められた不登校のさなかにある当事者にとって切実に必要な、ありのままの自分として生きる安心の確保が、今回の新法の施行によって脅かされることへの強い不安です。
これは文部科学省の有識者会議においても「学校に起因するものも多くあることを、危機感を持って認識」(不登校問題に関する調査研究協力者会議報告、2003年)、「不登校のきっかけとなった問題には学校に起因するものも多くあることを深刻に受け止め、その解消に向けて最大限の努力をすることが必要」(不登校に関する調査研究協力者会議、2015年)と繰り返し指摘されているにも関わらず、不登校の子どもと保護者に適応を迫る学校や行政の働きかけが止まない従来の施策がもたらした強い不信のためといえます。そして今回の法案もまた、支援や措置という名のもとに当事者を圧迫する結果となることに歯止めが設けられていません。意に反して迫られることは、不登校に悩み自らを責めている当事者にとって生命への脅かしに他ならないと理解するべきです。
今、当事者の切なる訴えに誠実に対応し、不登校問題の解決に向けて当事者や関係者、専門家などによる、誰もが安心できる施策の立案に向けた努力を引き続き行うことが求められています。本研究所も教育研究に携わる者として、当事者の立場に立った不登校問題への取り組みに力を尽くしながら、緊急に以下のことを国会及び政府に求めます。
1.「教育機会確保法案」の今国会での制定は見送り、不登校児童生徒が安心して過ごせる日々の 確保のため、必要かつ適切な施策を早急に検討すること。その際に当事者や、関係者、専門家の 参加を保障すること。
2.この法案に含まれている夜間中学にかかる部分については、切り離して成立をめざすこと。
2016年5月17日
民主教育研究所運営委員会
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