大阪教育文化センター 事務局長 柚木 健一
はじめに
(大阪教育文化センターが8月に行った「君が代起立斉唱強制条例」廃止を求める呼びかけ人52名による共同アピール運動に、全国各地の教育関係はじめ多くの分野から747名にのぼる賛同が寄せられました。ご支援頂いた関係者のみなさまに改めて感謝申し上げます。)
橋下徹氏は知事を辞職して大阪市長選挙に立候補を表明したため、11月27日投票で府知事・市長同時選挙となりました。橋下氏の鞍替え立候補は、全面移転を断念したWTC(咲洲庁舎)問題の自らの責任を投げ捨て、「大阪都構想」を実現することがねらいです。「大阪都構想」は「大阪都」に財源と権限を集中させ、大企業呼び込みを「成長戦略」とする巨大開発優先、府民施策切り捨て、地方自治体の役割を破壊するものです。そして橋下氏と彼の率いる「大阪維新の会」は、「教育基本条例案」(以下「教育」)と「職員基本条例案」(以下「職員」)を選挙の争点にして、勝てば「民意」を得たとして条例案の強行をねらっています。
管理統制による恐怖政治の断行
6月の「君が代強制条例」に続いて、「教育」と「職員」の2条例案を同時に提出した橋下・「維新の会」の意図は、「大阪都構想」へ財界・大企業の利益に奉仕する「人材育成」のための恐怖政治による民主主義破壊と教育支配にあります。
2条例案特徴の第1は、「5回目の職務命令違反又は同一の職務命令に対する3回目の違反を行った教員等に対する標準的な分限処分は免職とする」(「教育」第38条)(「職員」第32条)とした教職員・府職員を職務命令による上意下達の管理統制下に置き、上意に反すれば免職処分で排除する脅しの支配です。懲戒・分限処分の規定はなんと「教育」は全48条のうち22条、「職員」では全53条のうち21条にものぼっています。
第2に、毎年5段階の相対評価で5%の最下位ランクDを2回連続すれば分限処分(「教育」第28条 「職員」第24条)として成績主義による競争を激化させ、「下位評価」の職員を切り捨てるというもので、毎年これを繰り返せば連携協力を必要とする教育活動や公務労働の場そのものが破壊されてしまいます。同時に条例案は脅迫的支配と競争主義の矛盾した内容を抱えていることも見ておく必要があります。
第3は、府に「関する条例のうち最高規範である」(「教育」第48条 「職員」第53条)として、2条例案で独裁的支配をはかっていることです。橋下氏が「今の日本政治に必要なのは独裁」「市長選に勝ったら市の幹部を総入れ替えする」(6月 「維新の会」パーティ)などと言い放った「独裁志向」の具体化です。2条例案は、国民主権・教育権・全体の奉仕者論に立つ公務労働の本質などを定めた日本国憲法・地方公務員法に反することは言うまでもなく、条例案を「最高規範」とする規定は憲法敵視の確信犯的な横暴といわねばなりません。
大企業奉仕の「人材育成」と公教育破壊の「教育基本条例案」
「教育基本条例案」(以下「教育条例案」)が「民意が十分反映されてこなかった」「政治が適切に教育行政における役割を果たし」(前文)、「知事は・・高等学校教育目標を設定」(第6条)と政治権力による教育介入・支配を公然と述べていることは、改悪教育基本法でも継続された政治介入排除の原則を踏みにじる重大な誤りを犯すものです。
そして「教育条例案」がねらうのは「人材」づくりです。前文で「グローバル社会に対応できる人材育成」、「国際競争に対応できる」教育をめざし、さらに第2条で、「競争力の高い人材育成」「義務を重んじる人材育成」「愛国心に溢れる人材育成」などとくりかえし「人材育成」を強調しています。これには子どもを大企業の利益と国際競争に勝つための「材料」「もの」としか見ず、子どもを学びと成長・発達の権利の主体者として見る視点のかけらもありません。
毎日新聞「記者の目」記事(6月)に対して、すぐに橋下氏は「教育は2万%強制」と噛みつきました。条例案が示す強制と競争の教育は子どもたちの学びと主体的な発達の権利も奪います。全国学力テストに加えて大阪府学力テスト成績の学校別公表義務づけ(第7条)、府立高校学区制の撤廃(第43条)、3年連続で定員割れの府立高校は統廃合(第44条)などなどは、子どもたちを学力テスト成績競争の道具とし、高校での学びの道を閉ざし、学びの場から排除するものです。(「大阪の子どもに笑顔を」といって知事になったが、あれはマッカナウソだった。やはり彼は「詐欺師的確信犯」)。
「教育条例案」は、学校組織をも企業の経営論理に置き換えます。すなわち校長のマネジメント式学校運営と管理能力を問い、民間からの公募と任期制を導入(第14条)するとともに、教員には校長の運営指針を職務命令と処分の脅しで服従させます(第9条、第38条)。
保護者に対しても「教育条例案」は冷酷です。曰く「保護者は、教育委員会、学校、校長、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない」(第10条)。わざわざ教育委員会はじめ全てを列挙して保護者に一切の口封じを強要しているのです。しかも「社会通念」は権力者の裁量で都合良く使われるでしょう。保護者を学校教育から排除して学校教育が成り立つとでも思っているのでしょうか。加えて第10 条は、家庭は「社会常識及び基本的生活習慣を身に付させる教育を行わなければならない」と義務づけして家庭にまで踏み込むことを忘れません。「口封じをした上に大きなお世話」と保護者から反発の声が聞こえてきそうです。
まさに「教育条例案」は公教育である学校教育を否定し、教職員や子どもの権利を剥奪し、保護者の学校教育への参加を拒む「教育破壊条例」と言わねばなりません。
常軌を逸した2条例案は撤回しかない
「教育」「職員」2条例案は、府職員・教職員を行政の下僕とし、子ども・保護者、ひいては府民全体を強権的ファッショ政治の支配下に置くものです。こんな常軌を逸した不法・不当な条例案は撤回させるしかありません。いま条例案に対する批判や疑問の声が府の内外から急速に高まってきています。
府教育委員会は、教育長はじめ全員が条例案に反対し、強行されれば委員全員が辞職を表明しています。府立高校PTA協議会は「教育の場が政治の道具であってはならない」と「維新の会」宛に嘆願書を提出しました。
大阪教職員組合はじめ労働組合・民主団体の職場・地域での学習討論会や宣伝行動も活発に行われています。
府議会では「維新の会」以外の会派が反対の態度をとっており、次第に橋下・「維新の会」孤立の様相を呈してきています。
大阪教育文化センターも10月、2条例案で「教育はよくなるのでしょうか」と問いかける緊急の府民向けパンフレットを発行し、その普及に努めるとともに、条例案のねらいと本質をテーマにしたシンポジウムの開催などにとりくんできているところです。
(ゆうき けんいち)






